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河を渡り、俺は千葉県までやってきた。
千葉………………思えば遠くへ来たもんだ。
甘ったるいMAXコーヒーを、俺は一気に飲み干し、
駅前に凛と建つパルコをじっと睨みつけるのであった。
五階にある、島村楽器。目指すは……ソコ。
そう!
俺はこの店に一番高いギターを弾くためやってきたのだ。

もちろん、あくまでも挑戦的な態度で、
およそ200本はあるギター群を俺は睨みつけた。
果たして。
そんな俺の眼前に立ちふさがるひとりの男。
さわやかな、笑顔眩しき若人。
鈴木健太郎………………ケンタロス。
島村楽器 津田沼パルコ店・ギター担当。
スズキケンタロウ。姓、名ともになんてさわやかな名前。
まるでお侍さんみたい。
ともかく、
俺はそんな津田沼の若き志士をじろりと睨みつけ、
…………言ってやったのだ。


健太郎 「コレ、うちのオリジルブランドなんです。」
―― ヒストリー? オリジナルブランド?
健太郎 「そうです。じゃあ、
まずは『ヒストリー』というブランド名の、
由来からお話しましょうか。」
―― はあぁ……。
健太郎 「江戸時代くらいの話だと思ってください……」
―― えっ……江…江戸時代? な、なに?
健太郎 「まあ、まあ。
つまり18世紀から19世紀くらいのことです。
その頃のカナダでは、たくさんの木材が切り出され、
製材所まで、河を下らせ運んでいたんです」
―― ほぉほぉ。確かに江戸時代っちゃ、江戸時代だけど……。
健太郎「ものすごく大量の丸太だったらしいんですが、
その中のいくつかは、河の底に沈んだものもあるんです。
発見されたその木材で作ったギターが、これなんです。
つまり、河底で眠っていた歴史ある銘木から作ったので
……ヒストリー」
―― はぁ〜。なるほど。
健太郎「確かに、これはいわゆるヴィンテージギターとは違います。
歴史も浅いブランドです。
けれども、
250年も前に伐採された、
樹齢200年以上の木材だったりするんですよ。
ある意味、本物のヴィンテージと言えるでしょ?」
……本物のヴィンテージ。
確かに……そうかもしれない。
最高の木材で最高の楽器を作ろうとした島村楽器の本気を、
感じさせる話じゃないか。
まさに歴史ロマンを抱かせる逸品だ。
考えても見てくれよ。
ちょんまげ結っていた頃の木材でできているギターだぜ。
俺は………………ちょっと感動していた。
しかしながら、そんな歴史ロマンに浸る暇は、
俺にはなかったのだ。
そう、俺には……言わねばならない台詞があった。
なぜなら、俺はそのために、この店に来たのだから。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【37万8千円のスモーク・オン・ザ・ウォーター】
俺は弾く。この店で一番高いギターを弾く。
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」/ ディープ・パープル
…………歴史ある1曲だ。
ちなみに追記しておこう。
俺のギタープレイのため、きちんと使用許可申請をJASRACには出してある。
つまりJASRAC了解済み……さらにいえばJASRACお墨付きの、
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」なのだ。
37万8千円の悠久の歴史を感じさせる音色…………聴いて欲しい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
最後に、俺は健太郎に尋ねた。
「ところで、ケンタロス。あんたがはじめてガツーンときたバンドは?」
健太郎は答えた。
「クラッシュです」
クラッシュ!!
そいつは、実にいいバンドだ。
うん、実にイイ。
果たして、俺の旅は…………まだまだ続く。

取材協力:
島村楽器 津田沼パルコ店
〒274-0825 千葉県船橋市前原西2-18-1 パルコA館5F
TEL: 047-474-7700
URL: http://www.shimamura.co.jp/tsudanuma/index.php
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