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MOOCS TOP > 特集 > ちょっとひと息 > この店で一番高いギターを弾かせてくれ! > vol.5


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この店で一番高いギターを弾かせてくれ!
値段の高いギターが、必ずしもいいギターだなんて思っちゃいない。
だけど、ロック少年だった俺は、昔から知りたかった。
一体この世で一番高いギターって、どんなギターなんだろう?……って。
俺の夢……。
それは、いつの日か、そいつをこの手で抱きしめたい……って夢だった。
俺の名はヴィン★セント。ギターを愛する風来坊。
果たして、当コーナーは一番高いギターを探し求める男の、いたってまじめなギター紹介コーナーなのである。

 
vol.5 神保町 須賀楽器

お茶の水の駅からだと、
明治大学の坂をずずーっと下りて、
靖国通りにぶつかったとこを、ちょいと渡って斜めにはいれば、
そこが神保町すずらん通り。
いくつもの種類の店が所狭しと並び数多の「趣味人」をそれぞれに待つ。
そんな町だ。まさに「粋な趣味人のサンクチュアリ」

…………そりゃ、周りは随分と変った。
デカイ道路に挟まれて、新しいビルも増えた。
けれど、その一角だけは昔のままで踏ん張っている。
おおいに健闘している。
…………世界最大規模の古書店街を擁する町、それが“神保町”なのだ。

そこに
一軒の「楽器店」がある。
少し足を戻せば、若者で賑わうお茶の水の楽器店に比べて、
その店は、どこか“趣(おもむき)”が違った。
言葉を選んでもしかたあるまい。
正直な店の印象を記そう……。

………………古い。ひどく古びている。

さらに、
色褪せたショーウィンドウに並ぶ、これまた古びた楽器類。
入ることすら躊躇したその店の名は……
須賀楽器…………一九〇七年創業。
実に、今年100周年を迎える老舗中の老舗であった。


神保町 須賀楽器


店に入る。

俺は、あくまでも挑戦的な態度で、
ガランとした店内を睨みつけた……と、
いつものごとく、
睨みつけたのではあるが…………誰も出てこない。
おなじみの展開ならば、
ここで誰かが俺の眼前に立ちふさがってもよさそうなのだが、
…………それがない。

「おい、だ、誰か……」と、
思わず店内を伺う俺。
すると…………。

「はい?」
ヒョコっと、
奥から顔だけのぞかせコチラを見る男の姿が……。

彼の名は須賀雄一郎。
泰然自若、
飄々とした雰囲気。
とぼけた味がたまらないこの店の“若旦那”。
年のころは、俺より少し上とおぼしき男。
俺は、改めてそいつに
…………言ってやった。



いいかい? いますぐこの店で一番高いギターを持ってきてくれ




Gibson スーパー400

Gibson スーパー400 価格 130万円



須賀 「ジャズギターですよ。130万円(笑)
    なんで高いんでしょうね?」

―― なんでって……(苦笑)。というか130万!?
   ちょっと待て! ……いや、言っちゃ悪いけどさ、
   この店の外観とかから考えて、ちょっと予想外の値段なんだけど。

須賀 「ねー。びっくりですよねー。
    72年くらいかなぁ? 
    だいたいね、いいかげんなんですよ、年代とかって。
    この頃のギターは……」

―― いいかげん……って(苦笑)。

須賀 「このギターはね、日本人が弾くと体型的に負けるんです。
    よっぽどタッパがないとね。ジャズギターはね……」

―― おう。その話は知っている。実は、このまえシモクラセカンドハンズに
   行ってきたんだが、そこで、175を……

須賀  「あぁ、シモクラセカンドハンズさんに、行ったんだ。
     安仲さんでしょ。店長さん。
     いい人ですよぉ。存じ上げておりますよぉ。
     あれ? あんまり言わない方がいいのかなぁ…………
     一応、同業としてライバルですもんねぇ(笑)」

―― えっ? し、知りあいなの……

須賀 「175を紹介されたんだぁ。
    175のワイドが16 1/4 インチですよ。
    で、このスーパー400が18インチ。
    うん、一回りちいさいんですよ。175の方が。
    そっかー。安仲さんにあったんだぁ。
    安仲さんはいい人ですよぉ。うん、うん」

―― いや、確かにいい人だったけど……。
   しかし、なんというか、おたくの店も
   なかなかな佇まいというか、なんというか……

須賀 「いやー、はっきり言っていいですよー。
    古いですよねぇ。今年100周年。古いだけが自慢です(笑)
    古賀政男が下宿してたらしいですね」


―― えっ!? 古賀! 明大マンドリン倶楽部!
   すごいなぁ。
   あのー、有名人とかも今でもくるの?

須賀 「えぇ、今でも、松崎しげるさんや、
    charさんなんかも、よく来てくれるんですよ」

―― えっ! えぇ!!

…………なんなんだ、この店の魅力は。
そして、なんなんだ、この男の魅力は。
聞けば聞くほど呑み込まれていく、まさに「魅力の底なし沼」。
噛めば噛むほど味の出る須賀楽器。須賀雄一郎。

おそるべし、百周年の味わい深さよ。
もっと聞いていたい。
いや、もっと調べたい須賀楽器。
改めて別の「企画」考えて、
もう一回取材に来ようかなぁ……なんて想いに取り憑かれる俺であった。

しかし、そんな“構想”は置いといて、
俺には……言わねばならない台詞があったのだ。
なぜなら、俺はそのために、この店に来たのだから。



オッケー、言いたいコトは済んだかい?だったら……いますぐ俺に、こいつを弾かせてくれ




Gibson スーパー400


【130万円のスモーク・オン・ザ・ウォーター】

俺は弾く。この店で一番高いギターを弾く。
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
…………1972年の「曲」を、72年「ぐらい」のジャズギターで弾く。

おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「俺」。
俺のプレイのために、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。
130万円の音色を…………聴いて欲しい。古賀政男の魂宿る音色を。




最後に、俺は須賀に尋ねた。

「ところで、あんたがはじめてガツーンときたミュージシャンは?」

しばらく考え込み、須賀は言った。

須賀 「スタンリー・ジョーダンかなぁ。
    両手で弾くあの方は……いい!」


おぉ! ジャズ・ギターの革命児!!
そいつは…………実にいい。


果たして、俺の旅は…………まだまだ続く。






俺が抱いたギターの、現在までの総額 6,135,000円也




取材協力:
須賀楽器
千代田区神田神保町 1−5
TEL: 03-3291-2861
URL: http://www2.odn.ne.jp/sugamusic/


 






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