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MOOCS TOP > 特集 > ちょっとひと息 > この店で一番高いギターを弾かせてくれ! > vol.7


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この店で一番高いギターを弾かせてくれ!
値段の高いギターが、必ずしもいいギターだなんて思っちゃいない。
だけど、ロック少年だった俺は、昔から知りたかった。
一体この世で一番高いギターって、どんなギターなんだろう?……って。
俺の夢……。
それは、いつの日か、そいつをこの手で抱きしめたい……って夢だった。
俺の名はヴィン★セント。ギターを愛する風来坊。
果たして、当コーナーは一番高いギターを探し求める男の、いたってまじめなギター紹介コーナーなのである。

 
vol.7 御茶ノ水 ギタープラネット

「♪ 高ければ……それでいいんだ、
 ♪ 力さえ………あればいいんだ」


値段至上主義を掲げて旅を続ける俺。
『資本主義』の覆面レスラーを気取りつつ
今日もこの街へやってきた。

御茶ノ水。
楽器の街。

「高いギターを求めて」
俺=黄色い悪魔は「この店」にやってきたのである。

だけど…………
何かが違う今回の展開。
単に「高い」ギターを求めつづけてきた俺にとって、
何かを感じずにはいられぬ、今回なのであった。


御茶ノ水 ギタープラネット


店に入る。

おなじみ、
挑戦的な態度で店内を睨みつける俺。
立ちふさがるひとりの男。
彼の名は秋野大介。この店の店長さん。
果たして、
俺は、はっきりと言ってやった。
いつものように……
目の前の男にお決まりの台詞をぶつけてやった。


おい。兄ちゃん。いますぐこの店で一番高いギターを持ってこい……


そう。いつもならば、ここですかさず「一番高いギター」が
お目見えするはずだった。
本来ならば、「俺の存在感に圧倒され」て、すぐさま高い
ギターを持ってくるのが、……このコーナーの「お約束」だった。
ところが…………。

違ったのだ。今日は違ったのだ。
俺の眼前に凛と立つ秋野は………なんと、この俺に、
問いかけてきたのである。
予想外の展開に、若干のとまどいを覚える俺……。


秋野 「……高いギター? わかりました。すぐにお持ちしましょう。
    けれどもその前に聞きたいことがあります。
    あなたはいったいどんな曲を弾きたいのですか?
    それが……一番大事なことなんです」


―― えっ?
   いやー、どんな曲かって聞かれりゃ、
   正直、『そんなに上手くないスモーク・オン・ザ・ウォーター』
   なんだけど……

秋野 「オッケー。ならばあなたには、 このギターがいいんじゃないでしょうか……ね」



Martin 000-21 1948年製 価格 168万円

Martin 000-21 1948年製 価格 168万円


秋野 「さっきから、あなたは“高いギター”…“高いギター”…って、
    おっしゃっていますよね」


―― あ、あぁ。

秋野 「ただの楽器屋が、なまいきかもしれませんが、少し言わせてください。
    楽器選びというものは、はじめにソフトありきなんです。
    つまり……その人が、どんな音がほしいのか?
    どんな曲を弾きたいのか?
    それが一番大切なことなんです。すくなくとも……
    私はそう信じています。
    “高いギター”………、ということだけを言えば、
    600万を越すギターも、こちらにあります。
    けれども………
    その人にとって、一番『いいギター』を選ぶのが、楽器屋なんですヨ」


―― な、なるほど……一番いいギターか。
   わかる気がする。で、このギターは……

秋野 「トリプルオー。もっともバランスのよいギターです。
    クラプトンが好んで使ったことでも有名ですが、
    もっとも……ギタリストのギターにふさわしい逸品です。
    ネックの短さが弾きやすい。そして音の出かたが非常に優れている」


―― ほぉ。

秋野 「是非とも触れていただきたい。
    168万円……。安い値段じゃないです。
    もちろん、高ければいいわけじゃないし、ましてや1948年製だからって……
    古ければいいってもんでもないんですヨ。
    ただね、これは……ホンモノなんです。
    まずは、ホンモノに触れていただきたいんです。
    ギターが上手いとか下手とかは関係ないです。
    私は……思うんですよ。
    楽器って、『楽しい器』と書くじゃないですか、
    楽器屋は、お客様に感動を与えてこそ、楽器屋だと思うんです。
    感動しますよ………弾いてみたら。
    嘘じゃありません(笑)
    だから私は言いたいですね。
    『この店で一番高いギター』というよりも、
    『この店であなたに触れて欲しい、一番のギター』って(笑)」


男は言った。
感動を与える……と。
それは男の、
楽器屋として、その道のプロとして、
確固たる信念に裏打ちされた言葉に違いなかった。
男の熱い想いを、俺は知った。
俺は……男の言う「感動」に触れたくて言った。
図らずも、ソレを言うため、この店に来たのだが……。


オッケー、いますぐ俺に、こいつを弾かせてくれ


Martin 000-21 1948年製

【168万円のスモーク・オン・ザ・ウォーター】

俺は弾く。この店で一番高いギターを弾く。
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」

アコースティックギターで初めて弾く。
おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「三鷹のリッチー」=「俺」。
俺のプレイのために、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。
168万円の音色を…………
というよりは、ホンモノの音色を……聴いて欲しい。



あぁ正直に言おうじゃないか。 ちょっとしたカルチャーショックにも似た感覚だった。
こんなにも弾きやすいのか、と驚愕した。
軽い。
抱えやすい。
しっとりくる。
するりんと吸い込まれるよう。
はっきり言っておく。
「下手だから」こそわかる。
あぁ、
俺は、確かに……感動した。
悔しいけれども、…感動した。

「右手が上手くなりますよ。このギターなら…」

満足げに微笑む秋野の顔。
そういえば、
右手のことなんて、今まで考えたことなかった…。
音を出す楽しさを……俺は知ったんだ。
果たして
俺は彼に尋ねた。

「ところで、あんたがはじめてガツーンときたミュージシャンは?」

秋野は言った。

「エド・ガーハードですね」

アコースティックギター・ファンを虜にする、
職人的ギタリスト。
うん、
そいつは…………実にいい。

果たして、俺の旅は…………まだまだ続く。




俺が抱いたギターの現在までの総額 10,564,000円 +感動(プライスレス)也



取材協力:
ギタープラネット
東京都千代田区神田駿河台2-4-5
TEL: 03-5577-9666
URL: http://www.pan-project.com/planet.html


 






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