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この店で一番高いギターを弾かせてくれ!
値段の高いギターが、必ずしもいいギターだなんて思っちゃいない。
だけど、ロック少年だった俺は、昔から知りたかった。
一体この世で一番高いギターって、どんなギターなんだろう?……って。
俺の夢……。
それは、いつの日か、そいつをこの手で抱きしめたい……って夢だった。
俺の名はヴィン★セント。ギターを愛する風来坊。
果たして、当コーナーは一番高いギターを探し求める男の、いたってまじめなギター紹介コーナーなのである。

 
vol.9 渋谷 HOOCHIES

いきなりだが、俺は“プロレス”が好きだ。あの怪しげな空気感が好きだ。
具体的に言えば……“ロープに振られて、きちんと戻ってくる”ところが好きだ。
………………それは実に、粋な行為なのである。
人と人との世の中だから、俺はいつだって「粋(いき)」でありたいと願うのだ。

さて、今回は、
渋谷……南口。国道246号線を右に折れてそのまま坂を上る。
線路やら、高速道路やら、歩道橋やらが、
剥き出しのまま交差する妙を、肌に感じながら歩く。
すると、なだらかな坂の途中に粋なギターショップが現れる。


その名は…………『フーチーズ』


渋谷 HOOCHIES


ところで、
俺はいつだって「一番高いギター」を求め旅をしている。
これまでその旅路で様々なギターに、そしてギターショップに出会ってきた。
もちろんすべてアポイント無しの飛び込みである。いわゆる、“ガチンコ”勝負だ。
正直、断られることも多々あるし、やんわりとだが、あとから掲載拒否を
申し出るお店も存在する。至極、当然の話だ。恨んでなんかいやしない。
だって、……タフな生き方しかできぬ男の、タフで勝手な申し出なのだから。

あぁ、果たして、今回。
俺はあらかじめ「店」に電話をかけておいた。もちろん、ほんの気まぐれで…。
すなわち俺は、実に“タフな”口調で前もって伝えておいたのだ。
受話器の向こうの、これから行く店の相手に……。

 おい……。その店で一番高いギターを用意しておけ……

……そう、つまり、傍若無人な俺の来店に合わせて、
店は「一番高いギター」を準備しているはずの…今回なのであった。

果たして、満を持して店に到着する俺。
そして。いつものように挑戦的な態度で睨みつけようとする、
と、その瞬間…………………………………………
………………………………………俺は、数人の男どもに囲まれた。

「ヤバイ! 電話なんかするんじゃなかったかも!」

殺るか……、はたまた殺られるか……。ぴりぴりとした緊張感が走る中、
ひとりの男が俺の前へずずっと歩を進めてきた。
下平敏照………。この店のスタッフ。
気づけば、俺を囲む店のやつら全員から、敵意というよりも、何か別の視線を感じる のであった。
知っている、この種の視線。キラキラと輝くやつらの瞳。

なんというか……それは、まるで…………。
そう、かよわき小動物を見るような、慈愛に満ちた視線だったのだ。

果たして、下平は俺をボロボロのギターケースの前に連れていった。
そして、言った。

 どうぞ……これでスモーク・オン・ザ・ウォーター弾いて下さい


フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製 価格 300万円

フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製 価格 300万円


下平「どうぞ、どの店よりも、素敵な音が出るはずです。……どうぞ」

―― おい、ちょ、ちょっと待て。いや……、いきなりこんなにウエルカムの状況は、
   はじめてなんで、ちょっと戸惑って……というか、なぜその曲名を………

下平「(微笑)スモーク・オン・ザ・ウォーター弾くんですよね。
   是非弾いてみてください。さっき、自分でも弾いてみましたが、
   セッティングは完璧です……」


―― えっ! あ、はい。……っていうか、もう弾いたんだ、自分で……。

下平「はい。……あっ、そっか。ギターの話が先でしたっけ。
   見ましたよ、このコーナー。いままでの演奏も全部、見ました。」


―― あっ……見ちゃった? そ、そっか。

下平「はい。でね、このギター、なにが凄いかって全世界で限定275本だけなんですよ」

―― おー、な、なるほど。ん? でもちょっと待って。
   それはいいけど……これ2006年製でしょ。それにしちゃボロボロすぎない?

下平「いやー、実はこれ“レプリカ”なんですよ。
   それも、ただのレプリカじゃない。言うなれば…………“本物のレプリカ”な んですよ」


―― 本物のレプリカ!? どういう意味?……。

下平「これはね、
   『一億円で落札されたクラプトン本人のギター』を、
   完璧に採寸して完璧に再現した完璧なレプリカなんですよ。
   ギターの傷、煙草の焦げ付き……、それだけじゃなくて
   ギターケースの傷やらなにやらそっくりそのまま、
   プレートの欠けから端切れまで。すべて再現されてるんです」


―― えぇ!? まじで! すげぇ! 

下平「でしょ?
   良かったら細かいトコまで写真に撮って紹介したらどうですか」


―― あっ、そ、そう? じゃあお言葉に甘えて……コチラに!↓。

フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製 フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製 フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製
フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製 フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製 フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製


下平「表面はね、チェーンとかで、
   コツコツと傷つけたりもしたみたいですよ。
   …………だけどね、さらに凄い話があるんです。
   これを作ったのは、なんと、
   フェンダーのマスタービルダー(主任の職人)なんですよ。
   つまり“本物”が作った“レプリカ”なんです。
   そもそも『一億円のクラプトンギター』ってのは、
   クラプトンが最高の音を求めて何本かのギターを
   組み合わせ作ったって噂もあるんですが、
   それも寸法から何から、全部、忠実に再現してあるんです。
   だから、見た目だけじゃなく、つまり! 音まで完璧に再現されている、
   ってわけなんですよ。
   さぁ!
   どうぞ…………………………弾いて下さい」



……………果たして、
“本物”のレプリカ、“一億円のギター”のレプリカによる、本物の音色を
聴きたくないだろうか?
俺はそのギターを弾くため…………左手にトレードマークの手甲を装着した。
「あっ! 手甲!」……と、無邪気に反応する下平。
いやはや、実にウエルカムの状況……感謝の念を禁じえない。
では、改めて…………

俺には言わねばならない台詞があった。
なぜなら、俺はそのために、この店に来たのだから。


オッケー、言いたいコトは済んだかい? だったら……いますぐ俺に、こいつを弾かせてくれ


フェンダー クラプトンモデル ブラッキー 2006年製

【300万円のスモーク・オン・ザ・ウォーター】

俺は弾く。この店で一番高いギターを弾く。
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
…………本物のレプリカによる音色。

おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「エリック・クラプトンのそっくりさん」= 「俺」。
俺のプレイのためだけに、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。
300万円の粋なサウンドを…………聴いて欲しい。




ホントに、いい音だと想う。
まじで、実に素敵な音じゃなかった? いやはや、看板に偽りなし…だ。
たまには、前もってアポイントとっておくのもいいものである。
過酷な旅で傷ついた、俺のハートを癒してくれた粋な店『フーチーズ』よ。
どうもありがとう。

最後に
俺は下平に聞いた。

―― ところであんたがガツーンと来たミュージシャンは?

下平「キース・リチャーズです」

―― うん、実にいい。実にすばらしい。





俺が抱いたギターの現在までの総額 48,564,000円也



取材協力:
HOOCHIES
東京都渋谷区道玄坂1-16-7 ハイウエービルB1F
TEL: 03-5428-6739
URL: http://www.hoochies.info/


 






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