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MOOCS TOP > 特集 > ちょっとひと息 > この店で一番高いギターを弾かせてくれ! > vol.11


この店で一番高いギターを弾かせてくれ!
値段の高いギターが、必ずしもいいギターだなんて思っちゃいない。
だけど、ロック少年だった俺は、昔から知りたかった。
一体この世で一番高いギターって、どんなギターなんだろう?……って。
俺の夢……。
それは、いつの日か、そいつをこの手で抱きしめたい……って夢だった。
俺の名はヴィン★セント。ギターを愛する風来坊。
果たして、当コーナーは一番高いギターを探し求める男の、いたってまじめなギター紹介コーナーなのである。

 
vol.11 明大前 ハナムラ楽器 〜後編〜


前回からの続き……
ギター職人・花村芳範(70)。
「ギター? そんなもんより、もっと面白いもんがあるぜ。
はっきり言ってノーベル賞もんのな」
陽気な男は、いたずらっ子のようにニヤリと笑い、
……………………語り出した。


花村「うちの店じゃさ、
   ギター以外のオリジナル楽器も作ってんだ。
   うちはそもそも『楽器製作の店』だから……な」


―― ふむ。そうか

花村「そもそも、1950年代のギターで俺は育ったんだ。
   60年代になって、ポリウレタンのギターばっかになってきた。
   カチンカチンの音で、ぜんぜん音が抜けねえ。
   なんか音が違うんでさ……自分でギターを作ったってわけ」


―― なるほど。それで、この世にただひとつ。単板一枚板から
   削り出して作るハナムラのギターが生まれたってわけだ……。

花村「そう。でもね、ちょっと問題があったんだよな〜……。
   うちで使う単板一枚板……無垢の木ってのは、
   300年も400年も生きてきた木だったりするんだよ」


―― ほぉ……。

花村「俺は今、70才だ。
   ……負けちゃうんだよな。400才の木と面と向かうと
   負けちゃうんだよ。ひよっこなんだよな〜。
   だからさ、すごいストレスがたまるんだよ」


―― なるほど。…………深いな。

花村「で、そのはけ口に……俺は作るってわけ」

―― ん? 何?

花村「だ・か・ら、ノーベル賞ものって言ってるだろ。世界にひとつの、
   名前も無い、奏法も無い、誰も見たことも無いオリジナルの楽器って
   やつを作るんだよ」


―― えっ? な、何? 何を言ってるんだよ? わかんない……

花村「ちっ、しょうがねえな。じゃぁ、今回は俺が言ってやるよ。
   あんたお得意の台詞をさ」


―― えっ?

果たしてそう言うと、花村は俺に向かって、とある台詞を口にした。
それは……
すなわち……

「おい、兄ちゃん。この店で一番おもしろい楽器を見ていってくれ」

明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器 明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器 

明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器 明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器 

明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器 明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器

明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器 明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器

明大前 ハナムラ楽器 オリジナル楽器

『吾輩たちは楽器である。名前はまだ無い』価格 3000円から85,000円くらい


花村「すごいぜ。これは。楽器界のノーベル賞もんだぜ、まじで。ウヒッヒッヒ」

―― な、な、何よ? これら?

花村「だから言ってんじゃん。名前も何にもない、世界で唯一の楽器だよ。
   人類史上、存在したことのない楽器だよ。ぜんぶ、俺が作った」


―― メ……メロンとかあるよ?

花村「マスクメロンで三ヶ月くらいかな、制作期間。
   最近、ボク、昆布の佃煮もらったんで、
   その箱でも作ったしな、
   あのね……、こっからちょっとマジな話するけどさ、
   たいていの人は、弦が6本ないと楽器とみない。
   みんなが演ってて、みんなが知っていて、奏法もわかってないと、
   認めようとしねえんだな。
   そこが“頭の固い”ところだよ。
   ギターの名プレイヤーなんて、世界にはゴロゴロしてんだぜ。
   だけど、俺が作ったこの楽器たちなら、すぐに世界的プレイヤーになれる。
   なんていったって、世界にひとつだけの楽器だもんな(笑)ウヒヒ。
   既成の楽器なんておもしろくねーよ」


―― なんだか……あんたが言うと、妙に説得力があるな。

花村「だって、ホントのことだもん。人生は楽しまなくちゃダメさ。
   楽しいぜ〜、俺の人生。くよくよ悩んでいるやつがいたら、
   一度、おいで。名も無いこれらの楽器でお騒ぎしたら、
   一発で元気がでるぜ。音楽って、そもそもそういうもんだろ?」


………………“人生を楽しめ。頭を固くするんじゃない”

花村の、その言葉は、俺の心にずどーんと響き渡った。
高いギターを求めさすらう俺の旅路は、
まったくもって、いつだって予想外の展開を魅せてくれる。
俺は“人生”を………………はからずも教わった。

いやはや、
小柄な花村の体に、そしてハナムラ楽器の小さな店内に、
これでもかというぐらい充満する“陽なるパワー”を俺は感じる。
俺は…………圧倒されていた。……実に、素敵だった。

あぁ、しかし、そんな感動の余韻を振り払ってまで、
俺には……言わねばならない台詞があった。
なぜなら、俺は“本来”そのために、この店に来たのだから。


おい、いますぐ俺にこいつを、弾かせてくれ。そして、あんたも…………是非弾いてみせてくれ」


【名無しスモーク・オン・ザ・ウォーター】

俺は弾く。この店で一番面白い楽器を弾く。
仮に名前をつけるなら……一弦ベース?
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
…………それだけは譲れない。

おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「俺」だから、
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」なのだ。
…………というか、もはやすでに、いちいちこんな断りを
入れているのが無意味にさえ想えてきた。
既成概念を軽く打破する、ノーベル賞ものの音色を聴いて欲しい。




さらに!
ハナムラ特製楽器の演奏を続けてご覧ください!








花村「どう? おもしれーだろ」

―― 確かに…………おもしれー。

花村「だろ? (笑) あんた、こんな言葉を知ってるかい?
   『一葉落ちて、秋を知る』……俺はこれらの楽器を、ただふざけて
   作っているわけじゃないんだよ。
   楽器の本来の姿を求めてるだけさ。うちにきて、ひとつでもいいから、
   弾いてみりゃわかる。誰がどんな弾き方をしたっていいんだ。
   既成の考えにあんまり捕らわれるなってこと。
   それは楽器とか音楽とかだけの話じゃないよ。
   世の中すべて……そうだと思うぜ」


―― 一葉落ちて、秋を知る……。
   なんだか、あんたの作った“奇妙な”楽器を弾いてると、
   何かが“わかった”ような気がしてくるよ。

花村「クックックック(笑)。まっ、勘違いかもしんねーけどな」

―― 確かに(笑)。…………ところで最後に聞きたいことがあるんだ。
   あんたがはじめてガツーンときた曲を教えてくれ。

花村「木曽節かな」

―― なるほど、そいつはいい曲だ。

花村「だけどさ、もうちょっとしゃべってもいい?」

―― えっ? あぁ、いいよ。もちろん。

花村「俺はちょっと言いたいことがあるんだ。
   ちょっと考えて欲しいことがあるんだよ。若い人たちにも……。
   ロックについてなんだけどさ、
   日本人がロックやるのもいいと思うんだよ。もちろん俺も好きだし……。
   だけどさ、
   日本の歌のひとつくらいやってくれよと、思うわけ。
   こんな話があるんだよ……。
   国際交流だかなんだかの集まりでさ、
   いろんな国のひとたちが集まったんだな。
   で、みんなが歌を披露したわけ。
   みんな自分の国の紹介をかねて、民族音楽とか披露してったんだ。
   そしたらさ、日本人の、一流企業に勤める商社マンがさ、
   プレスリー歌ったんだよ。どうよ?
   おいおい、それは違うだろ……って。
   アメリカ人に失礼だよな、“ソレは俺たちの音楽だ!!”って言われちゃうよ。
   “ふるさと”でも“さくらさくら”でもいいじゃない。
   日本人なら、ひとつくらい歌えなさいよ、と言いたいね…………」


―― なるほど。俺にとっては、ちょっと耳が痛い話ではあるけど……。
   それにしても、あんたの話はおもしろいな。もっと、聞かせてくれないかい?
   偉大なる人生の先輩サンよ…………。


あぁ、果たして、示唆に満ちた花村の言葉の数々は俺を虜にした。
俺はこのまま、一晩中でも聞いていたかった。
事実、俺はこの後も店の奥のイスに座り込み、花村と語り合った……。
俺が店を出る頃には、
明るかった明大前の街並みも、
すっかり暗くなっていた。
すぐそばを走る甲州街道は…………もう、すっかり秋だったのだ。





俺が抱いたギターの現在までの総額 49,567,000から49,649,000円くらい也



取材協力:
ハナムラ楽器
東京都世田谷区松原1-38-9
TEL: 03-3322-6537
URL: http://www1.ocn.ne.jp/~hanamura/


 






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