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聖地巡礼……魂のレコンキスタ。
旅は、ときに己の原点へと導いてくれることがある。
忘れがちな、かつての想い。
俺は……今日、聖地へと赴く。
「この店で一番高いギターを弾かせてくれ!」
通称コノイチ発祥の店に。
いやはや、
はじめから、高いギターを求めていたわけじゃないんだ。
ある日、
ぶらりと入った自宅近くの楽器屋で思いついたってわけなんだ。
「高いギターをめぐる旅なんて、面白いんじゃないだろうか」……と。
癖のある店でもない、馬鹿高いギターがあるわけでもない。
街に溶け込み、街の人々にも愛される、ごく普通の楽器屋。
聖地なんてのは……意外とそんな場所なのかもしれない。
果たして、半年前、俺がこの企画を思いつくきっかけとなった店。
それが今回のROCK INN 吉祥寺店だった。
楽器屋で、試しに弾かせてもらうのに、躊躇した経験はないだろうか?
俺のように、腕に自信のある人間でも、やっぱり……恥ずかしい時がある。
「下手クソのくせに……、なんて店員に思われたら」
「何を弾くかも、センスを問われるし……」
そんな想いを、胸に秘め、楽器屋の店内をただただ所在なげに
うろついた経験はないだろうか? 俺は…………ある。
果たして、ROCK INN 吉祥寺店は、
いい意味で敷居も低く、店員に声もかけやすそうな店だった。
半年前の俺は想った。……「うん、こんな店なら、俺でもいけそうだな」と。
結局、この店には突入することもなく、
今日まできてしまったわけであるが、
果たして、時は過ぎ、
俺は戻ってきたのだ…………この店に。
己の……、
そして、この企画の……、
原点を忘れないために。
俺は言った。
俺の前にたちふさがるひとりの男に言った。
男の名は戸練聰(とねりさとし)。この店の、もっとも声のかけやすそうな店員……。

戸練「メイド・イン・ジャパンです。世界に誇るべき日本人の
技術力の高さが産み出した一本……ですね」
―― おっ、なんだか大きく出たな。これって日本製なんだ……。
カスタムギターってやつだよね?
戸練「そうです。いわゆるカスタムオーダーってやつで、
見た目をヴィンテージに仕上げたものですね。
ただし、このギターの凄いところは細部へのこだわりが半端じゃないんです」
―― へー。
戸練「もともと、このフリーダムと言うメーカーは、
リペア……つまり修理の工房として有名なんです。
東京都は荒川区にあるんですが……」
―― んむ、下町の技術屋が作ったこだわりの一本……なんだか興味の湧く話だね。
戸練「(笑)。そうですか? でも確かに、技術者の技術の結晶と言えますよ。
高い技術を要するリペアのノウハウ、実績が存分に生かされたものなんですから。
仮に、同じ事をフェンダーでやろうとしたら
かなり高くなるんじゃないですかね。
……といいますか、大量生産ではできないことを、
オーダーで、一本一本作り込んでいるわけなんです」
―― なるほど……。たとえばどんなとこ?
戸練「ちょっと細かい話になりますが、それでもいいですか?」
―― おいおい、馬鹿にしてもらっちゃ困るな。
伊達にこれまで高いギターを弾いてきた俺じゃない。
あんたが話したいだけ、思う存分、細かい話をしてもらおうじゃないか。
戸練「わかりました。それじゃ………………。
たとえば、フレットの素材ひとつとってもですね、
ステンレスの合金の具合まで考えられているんですよ。
ネックの部分で言えば、トルクを締めるマネジメントがですね……」
―― お、おい。ちょ、ちょっと待ってくれ。
…………若干、わかんなくなってきちゃった、……テヘ。
戸練「(苦笑)。とりあえずネジ一本の止め方まで考えているってことですよ」
―― な……なるほど。そ、それから?
戸練「表面の傷ありますよね。具体的には秘密らしいんですが、
一人でやると偏るんで、複数でやるんだそうですよ。
さらに、完全にでき上がったものに傷をつけると、
微妙に傷が鋭角になりすぎちゃうらしいんですね。
だから、ある程度、塗装した段階で傷を付けたりするんだそうです。
まぁ、あんまり細かい話をするのもアレなんで、割愛しますけど、
フリーダムと言う会社の、技術屋魂が結集された一本と言えるんです。
エレキギターというと、
どうしても海外が主流のように思われますが、
日本製は、素晴らしいですよ。特に、
個人店じゃなく、プロユースで会社規模だと、
日本では、フリーダムしかありません。
世界に誇れる……メイド・イン・ジャパンなんですよ」
……………メイド・イン・ジャパン。
俺は、その言葉に……グッときた。
ものづくりの伝統と技術力がある日本。
資源小国の日本が、世界に誇るべきものは、
すなわち技術屋魂なのだ。
……ちっぽけな極東の島国を俺たちは、もっと、もっと誇っていい。
そんな想いを新たにしながらも、俺には言わねばならない言葉があった。
なぜなら、そのためにこの店にきたのだから……。

俺は弾く。この店で一番高いギターを弾く。
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
…………日本を背負って俺は弾く。
おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「三鷹のリッチー」=「俺」。
そんな俺のプレイのためだけに、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。
34万円のサウンドを…………聴いて欲しい。日本男子のサウンドを。
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最後に
俺は戸練に聞いた。
―― ところであんたがガツーンと来た曲は?
戸練「B.Bキングの“エブリデイ・アイ・ハブ・ザ・ブルース”です」
―― 実にいい。実にすばらしい。
原点回帰を果たした俺の旅は…………まだまだ続く。
アイ・ラブ・ニッポン……。
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