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“高いギター”で
“スモーク・オン・ザ・ウォーター”を弾く俺の旅。
そんな旅を続けるなかで、俺は、
なにやらでかい組織と対峙することになった。
もちろん順を追って話すなら、
たぶん一週間でも話続けられるだろう。
けれども、ひとまず要点だけ言うならば、そういうことなのだ。
俺の前に立ちはだかる“謎の組織”……。
なんだか、それは冒険小説みたいに聞こえるかもしれない。
けれどもそれは、間違いなく現実の話なんだ。
ギターをめぐる俺の冒険。
クロスロードの悪魔は、
高いギターに魅入られた俺を、
いったいどこに導くのだろう……。
世の中に「意味のない」符号は、決してない。
だからきっと、
ギターをめぐる俺の旅も何か意味があるのだろう。
果たして、
タフな俺は、その日、パシフィコ横浜で開催された
「2007 プレミアム・ギターショウ」に忍び込んだ。
それは11月1日から4日までの四日間開催されたギターの祭典だった。
2007年11月8日現在……そう、つい先日の話だ。
プレミアムなギター……。
そいつぁ、すなわち“高いギター”だと、
すぐさま見破った俺は、前調べもせずに、横浜に赴いた。
だって、まるで俺のためのイベントじゃないか。
果たして、なぜだか俺は決めつけていた。
「プレミアム・ギターショウ」って言ったって、
きっとちんけなイベントに違いない……と、
確かにそれは浅はかだったかもしれない。
結論から言おう。その実は……
なんと今年で40周年、二年に一度開かれる、
世界最大の楽器の祭典「2007 楽器フェア」の、
その同時開催特別企画であり、
来場客数10万人を誇る一大イベントだったのだ。
いやはや、もちろんタフな俺は、
いつものごとき眼光の鋭さで睨みつけながら会場に歩をすすめた。
しかしながら予想だにしなかった広い会場。
“その筋”の人々が一気に集う独特の空気感。
衆人環視のもと……
俺は……
ここで……
……………………………………弾けるのか?!
微量ではあるが、実に嫌な汗が俺の額に浮かぶ。
しかしながら、このまま会場入り口で棒立ちしていてもしかたない。
意を決し、とりあえず入り口近くのブースに俺は飛び込む。
なるようになれ……。 見る前に飛べ!
忙しそうにするそのブースのスタッフを掴まえ、
俺はいつもの台詞を口にする。いや、しようとした。
……と、その瞬間…………
店のスタッフは俺の顔と左手の手甲をまじまじと見ながら言ったのだ。
男 「あれ? スモーク・オン・ザ・ウォーター?
来ちゃった? アポなし? ……ここまで来たんだ」
―― えっ?
果たして、
俺に掴まった男の顔……実に見覚えのある顔だった。
名前だって知ってるぞ。下平敏照。
ガツンときたミュージシャンはキースリチャーズ。
そして店の名前は渋谷の「フーチーズ」。
実に連載9回目に、俺が訪れたあの店、そしてあの男じゃないか……。
果たして俺は言った。

下平 「来たんですね……。そっかー…… 」
―― いや……。うん。えっ? まずかった?
っていうか、出店してたんだ。
下平 「はい。ぜんぜん、まずくなんてないですよ。
毎年、出店してますよ。
でもなー。他のブース回って、弾くつもりなんでしょ?」
―― うん。
下平 「……だいじょうぶかなー?
みんな忙しいからなー。
あのー……紹介とか、そういう手助けできませんよ」
―― うん。わかってる。ひとりでがんばる。
だけどやっぱり……イベントとかって、
高いギター運ぶし、大変なの? 気もつかうでしょ。
下平 「ハイエースで二往復ですよ。
すっげぇ気を使います……。
高価だし、貴重だし……。
準備が大変ですね、毎年。
どこのお店も同じじゃないですか?
でも、お客さんがたくさん来て、実際に触れてくれて、
楽しんでくれたらすごく嬉しいですよ」
…………楽しんでくれたら嬉しい。
その言葉を口にする下平の目に……迷いは無かった。
まるで、学園祭に一途に取り組む学生のような、青春の輝き。
素敵だった。
俺は、下平との再会を喜んだ。
この異空間で、偶然にも出会った下平。「フーチーズ」。
まるで、旧友にでもあったような、安堵感に支配されていた。
しかし、そんな再会の感傷に浸っている場合ではなかったのだ。
果たして、俺には言わねばならない台詞があった。
なぜなら、そのためにこのイベントにきたのだから……。

俺は弾く。このブースで一番高いギターを弾く。
曲はもちろん
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
…………衆人環視のもと、嫌な汗をかきながら弾く。
閉じられた空間ならまだしも、開かれた空間には、
なかなかの緊張感がある。
おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「三鷹のリッチー」=「俺」。
そんな俺のプレイのためだけに、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。
81万円のサウンドを…………聴いて欲しい。
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最後に、
俺は下平に聞いた。
―― しかし、でっかいイベントだよな。
下平 「ええ。うちの社長が、実行委員なんですよ」
―― へーそっか…………って、え? じ、じ、実行委員?
下平 「ええ、スモーク・オン・ザ・ウォーター弾いている間に、
電話しときました。社長に……。
手甲の人が、また来ましたって報告しときました」
―― 手甲の人って。よ、余計なことを……。
下平 「で、どうせ、取材するんでしょ……って。
他のお店に取材するのは自由だけど、
迷惑かけないようにね……って
一段落ついたら、ちょっと話しようか?って言ってました」
―― え!? 何? なんなんだ。あんたらの…………謎の……組織っぷり?
下平 「地方からも、たくさん出店されているんで、
普通は取材しにくい店もチャンスですよ。
がんばってくださいね……(ニヤニヤ)」
果たして、俺は会場をぐるりと見回す。
見たこともないようなギターが並ぶ。
生産が限定されたプレミアムギター、
長い年月を通り抜けてきたヴィンテージギター、
ファクトリーレアと呼ばれる1本もの……。
……よし。
プレミアム・ギターショウ。
相手に不足なし。
概要はよくわかんねーけど、ともかく……前進あるのみだ。
当たって砕けろ、ゴー・フォー・ブロック。
俺の旅はまだまだ続く…………
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