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どうやら俺は、
取り憑かれちまったというワケなんだ。
いやはや……。
実にギターって存在は不思議なものなのである。
なぜだろう?
それは……
木で作られた音の出る装置にすぎないのに。
そのどこかに、
生命の所在を見つけてしまう……。
ある種のアニミズムといった思想を、
ギターは人に抱かせる。
恐らくは
奏でるその情感豊かな調べを、
まるで
“ギター”自身の発する“感情”として人が感じるからだろうし、
そして恐らくは、
装置として単純な構造でありながら、
(実際、考えてもみてほしい。
ピンピン張った線を弾(はじ)いて音を出すってだけなんだぜ)
それゆえの恐ろしく手の込んだ作りによって、
人は、
作り手の情念をより認知しやすく共感しやすくなる……
といった理由からなのでもあろう。
いやはや………………
つまりは、
回りくどい言い方をしないのならば、
「ギターって、なんだか魂の存在を感じちゃう楽器だよね」
……ってことなのだ。
一本の木から作り出されるギターの制作過程は、
その背景が濃密であればあるほど、完璧に違いない。
職人という名の“魔術師”は己の技巧を最大限に駆使して、
そのモノに………………生命を授けるのである……。
果たして実際、
想像してみて欲しい。
例えば……だ。
どこぞの高山の山小屋に住んでいるような職人が、
こつこつと一人で作っていたりしたら……。
そんなギター、
もう完全に“精霊”とか宿っちゃってても不思議じゃないだろう。
例えば、
美しい森と湖と丘が広がる山脈の村で、
代々、木工を生業とする職人とかが一本一本仕上げていたのだとしたら、
もう、絶対に魂とか宿ってるに違いないのだ……。
あぁ、果たして……。
そんな魂ギターは………………存在する。
プレミアムギターショウの会場で、
俺は、名古屋からやってきた
「ノイベラックス」と言う名の店と出会った。

ノイベラックス…………どこか奇妙な言葉の響き。
「こだわりの店」と言うには安直すぎる、
ただものならぬ佇まい。

果たしてじろりと睨みつける俺の眼前に立つ男。
名は、村山昌宏。
俺は言った。
村山「あまり日本では知られていない、なじみのない、
スイス製のギターです」
―― へー。スイスのギターなんてはじめて知ったよ。
村山「実は、ヨーロッパの方が楽器製作は歴史が長いんです。
いいギターが多いですよ。
職人が一人で作っていますから。
小規模な工房で作っています。
なかでもこのSOULTOOLのスイスの工房は、
まるでアルプスの少女ハイジに出てきそうな工房なんですよ」
―― ハイジに出てきそうな工房……。
ものすごく素敵な情景を思い浮かべちゃうな。
村山「(笑)とにかく仕事が丁寧ですね。
職人の国なんで……。
そして、とにかくオリジナリティが魅力です。
形だけでなく、工法から構造からすべて……」
―― うーん。素敵だ。実に素敵だ。
村山「SOULTOOLの職人は、
木工職人の家に生まれた、
まさに“木のスペシャリスト”なんですが、
そんな彼が精魂込め、すべてをひとりで
作ったギターです。
唯一無二の存在感がありませんか?」
…………SOULTOOL = 魂の道具。
……つまりは「感情を表現する道具」。
それがこのギターの…………名前だった。
目をつぶれば、広大な空に浮かぶ雲が俺の行く手を待っている。
俺は想像した。
アルプスの小さな村を想像した。
ピーターと言う名の羊飼いの少年が、無邪気に俺に手を振る。
口笛が遠くまで聞こえ……、美しいギターの調べが聞こえてくる。
おじいさん……どうか教えてください。
俺は、あの台詞を、
今日もまた言わねばならないのですね。
…………そう。
果たして、俺には言わねばならない台詞があった。
なぜなら、そのためにこのイベントにきたのだから……。

俺は弾く。このブースで一番高いギターを弾く。
曲はもちろん
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
…………衆人環視のもと、実に嫌な汗をかきながら弾く。
おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「三鷹のリッチー」=「俺」。
そんな俺のプレイのためだけに、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。
70万円前後のサウンドを…………聴いて欲しい。
アルプスの山に響く音色を聴いて欲しい。
俺がきっとクララを立たせて見せるさ。
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最後に
俺は村山に聞いた。
―― ところであんたのガツーンときたバンドは?
村山「マグマ。70年代のフランスのプログレバンドです」
―― なるほど。歌詞に、
フランス語でも英語でもなく
コバイア語なる創造言語を使用しているというバンド。
実に素敵だ。
ちなみにノイベラックス……。
店の名前に、どんな意味があるんだい?
村山「フランス語のヌーベルバーグがありますよね。
ニューウェーブ、つまり新しい波。
それを元にしているのですが、
新しいという意味のドイツ語“ノイ”、
英語でベースやギターを指す“アックス”をつけて、
ノイベラックス。
“新しいヨーロッパのギターやベース”を意味しています」
―― なるほど!
実に素敵な名前じゃないか。
果たして、名古屋からの使者……
ノイベラックス。
唯一無二の存在感。珍しいヨーロッパのギターを紹介する店。
俺は心に誓った。
いつか必ず…………
おまえの「店」で一番高いギターを弾いてやる。
……と。
震えて待つがいい。
果たして俺の旅はまだまだ続く…………
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