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果たして、
俺の旅は“高いギター”を求める旅である。
この先に、何があるのか……それは俺もわからない。
なぜ、高いギターを求めるのか? それさえもわからない。
ただひとつ、言えることは………………それが俺の使命、
……ということだけなのである。
果たして、俺は、
実際に店に行き、ギターを弾き、
そして、ココに顛末を記す。
行ってみなくちゃわからないし、
弾いてみなくちゃわからない。
そして店の人間に、
実際に話をきいてみなくちゃ……何もわからない。
俺の旅の行き先はわからないけど、
……それだけはわかることなんだ。
俺は………………“現場”が好きだ。
果たして、東京は恵比寿に、一軒のギターショップがある。
プロのミュージシャンたちに愛される店がある。
今現在の音楽シーンを作り出す彼ら…プロミュージシャン。
高野寛や佐橋佳幸らにもに支持されるという店の名は……、
サイケデリズム。
現場の声を知るからこその……
そんなギターが俺を待ってるはずだった。
恵比寿の街に、実に似合う店である。
決して大きいとは言えぬ店内だが、
シンプルな中に、センスの良さを感じさせる。
果たして……。
並々ならぬ俺の殺気に、
一人の男が眼前に立ちふさがる。
そいつの名は……石田紀之。
俺は言った。
石田「うちのオリジナルギターです」
―― ほー……。なんだか不思議な色だね
石田「ええ。色は、塗装場に行って、自分たちで色を作って、
実際に噴いてみてます。
これ、グリーンを一切使ってないんですよ。
でも、角度によってはグリーンに見えるでしょ」
―― グリーンじゃないんだ……コレ。……というか、
何色なんだ? 不思議な色だな。
ところで…………こちらのお店。
これって、いい意味なんだが……
地味〜に、落ち着くね。
石田「(笑)8年やってるんですけど……。
ふと気づいたら、社会生活に適応できなくて、
楽器店やってました(笑)」
―― うほっ(笑)。なんだかすごくシンパシーを感じるお話!
石田「ギターを売る人、修理する人、渡す人、
それと……ゴミ出し(笑)まで、
ぜんぶ同じ人がやっているのが、うちの特徴かな?
ずーっと、プロミュージシャンの人たちと仕事をしてきて、
こーゆー音が使える……とか、
そういったアーティストの意見を参考に作っていますね」
―― へー。……、じゃあ、オリジナルギターを作るあんただからこそ、
聞きたいんだけどさ、
……俺は、そもそも高いギターを求めさすらっているわけだけど。
やっぱり、作る側からも、“いいギター”ってなると、
高くなるのはしょうがないのかねー?
石田「高いギター……って、
一概に言っても色々あるじゃないですか。
他のお店とか、他のギターについて、とやかく言うつもりはないし、
……なんていうか“美術品”的に扱う側面も、
あるのかもしれないけど、
うちはホント、現場第一かな?
使ってもらってこそ……というギターを作ってますね」
―― ほぉ。
石田「高いからいいのかって話になると、どうかな? って思いますよ」
―― なるほど。
石田「うちはね、“超現場主義”なんです」
―― えっ? 超現場主義?
石田「ええ(笑)。
道具としてのギター……ってことをアーティストさんから学びましたね。
ギターは弾いてナンボなんで……。
あなたが、今までどんな“高いギター”を弾いてきたかはわからないけど、
うちのギターは、
他のギターに比べて、
同じ値段だったら、絶対に負けないと思いますよ、ホントに……。
まぁ……ネームバリューは負けているかもしれないけど(笑)」
―― なるほど。
石田「そもそも、うちはリペアもやっているんですね。
で、買っていただいて、何ヶ月後かにリペアに来たとき、
いっぱい傷がついてた方がうれしいですね。
あぁ……いっぱい弾いてくれたんだ……って」
いやはや……………
“超現場主義”……
ギターは弾いてナンボ……
男の言葉は俺の心に響いた。
正直、高いギターを求める旅のなかで、
店によっては、試奏を“お断り”される場合も多々ある。
「あんたの腕前じゃ、うちのギターに失礼だ!」と、
門前払いをくう場合も…………正直ある。
だが…………この男は違った。
ならば…………俺も答えるべきだ。
俺にとっては、言わねばならない台詞があった。それが俺の使命。
俺は、そのためにこの店にきたのだから……。

俺は弾く。この店で一番高いギターを弾く。
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
…………弾いてみなくちゃわからないから弾いてみる。
おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「三鷹のリッチー」=「俺」。
そんな俺のプレイのためだけに、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。
思いっきり歪ませてもらった、俺用のサウンドを聞いて欲しい。
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―― ところでさ、あんた話しやすいから、ついでにどんどん聞くけどさ、
現場主義のあんたにとって、
いいギターってどんなギターなの?
石田「一番いいギターですか…………やっぱ売れるギターでしょうか?(笑)
いやいや、だけど、やっぱり、
弾く人が“いい!”って思ってくれるギターが一番ですよ。
サウンドありきなんです。
弾き手によっていろいろじゃないですか。
大事なのは、
どーゆープレイなのか?
どーゆースタイルなのか?
……それに合う音が出せるギターが、
いいと思いますね」
―― なるほど。
石田「今、あなたが
“スモーク・オン・ザ・ウォーター”弾いたじゃないですか」
―― あっ……はい。恐縮です!
石田「一回、聴いて、歪ませましょうって、ボク歪ませたんですけど、
それは、やっぱり、プレイスタイルに合わせたサウンドに、
したかったわけです。
上手い下手は置いといて(笑)。
適材適所だと思うんですよ。
たとえばツェッペリンと、クラプトンじゃ、
音のセッティングが異なるじゃないですか」
―― ほぉ、ほぉ、それはそうだよね。
石田「音楽を聴いていて、サウンドが見えるんですよ」
―― サウンドが……見える?
石田「そう。職業柄か(笑)、見えるんです。
見えるって表現があっているのかわかんないけど、
感覚的には、見える……んですよね。
たとえば、いろんなバンドがあって、
“このバンドで、このギターを使ったら絶対合う!”って言う風に……。
…………わかるかなあ?(笑)」
―― うん、なんとなくわかる気がする。
面白いね、その話。
石田「真面目な話、
語弊があるかもしれないけど、
必ずしも、いいパーツを使ったからいいって
わけでもないとも思います。
一万円のギターでも、
それが“合う”人もいるかもしれない。
合うスタイルがあるかもしれない。
ただ……やっぱりお金で買える音の良さってものもあるんですよ、もちろん」
―― はいはい。
石田「だから、少なくとも思うのはね、
ギターを持っている人は、
とりあえず、
そのギターの100%の良さを出してあげてほしいですよね。
ものすごく高いギターを買わなくたって、
ちょっとのお金で格段に変るわけじゃないですか。
とりあえずは弦は新しいのを使ったほうがいい。
ほんの少しのお金ですよ。
あとピッチ合わせ。
ピッチの合ってないギターはギターじゃなくて、
ただの“木”ですから(笑)。
それだけで、ずいぶんと変ります(笑)。
…………あっ、とはいえ、
よかったら、うちのギターは買ってくださぁい(笑)」
いやはや、
のらりくらりと
ところどころに挟まる軽口。
しかしそこに隠された、
男のギター愛は、しっかりと俺の心に突き刺さっていた。
恵比寿……サイケデリズム。
この店は面白い。
“超現場主義”の店………………実に素敵だ。
最後に俺は石田に聞く。
―― ところであんたがはじめてガツンときたバンドは?
石田「えー! 普通に音楽聴いてて、一枚なんて無理だよ(笑)」
―― いやいやいや(苦笑)、まーそー言わずに。
石田「じゃあ、スリム・ハーポの“レイン・イン・マイ・ハート”かな」
―― おぉ……ルイジアナブルース! そいつは実にいい!
果たして
俺の旅は…………まだまだ続く。
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