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この店で一番高いギターを弾かせてくれ!
値段の高いギターが、必ずしもいいギターだなんて思っちゃいない。
だけど、ロック少年だった俺は、昔から知りたかった。
一体この世で一番高いギターって、どんなギターなんだろう?……って。
俺の夢……。
それは、いつの日か、そいつをこの手で抱きしめたい……って夢だった。
俺の名はヴィン★セント。ギターを愛する風来坊。
果たして、当コーナーは一番高いギターを探し求める男の、いたってまじめなギター紹介コーナーなのである。

 
vol.33 練馬 WITH 

ときとして、
奇跡……としか言いようもない出来事が、
起きる場合がある。
果たして
1962年から1970年にかけての、
僅か8年間は“音楽”を愛するものにとって奇跡の年月だった。

いや、奇跡と呼ぶに相応しい……その“はじまり”は、
1957年7月6日までさかのぼるべきなのかもしれない。
ウールトンのセント・ピーターズ教会で、
二人の男が出会った、その日まで……。

ジョンと、ポールが出会い、すべてははじまった。
“偶然”と言う名の“必然”。
ザ・ビートルズ…………奇跡のバンド。
その“軌跡”を俺はたどる。

果たして、2008年春……
俺は、極東の島国、練馬と言う町で、
ビートルズの、魂が息づく場所に訪れた。


練馬 WITH


環七、桜台陸橋脇。
駅で言えば、西武有楽町線新桜台駅。
決して、広いとは言えぬ店内。
程よい雑然さが、なぜか心地よい。
3階建てのビルディング……それがWITHだ。

いやはや、“ビートルズ”という希有な存在は、
特殊……とも言える、熱狂的なファンを産んだ。
“ビートルズ研究家”……まさに、そんな称号が相応しい男が、
俺の行く手をはばむ。
そいつの名は……中島將行。
俺は言った。


  「おい……。この店で一番高いギターを持ってこい……」


リッケンバッカー325C58MG ジョン・レノン バージョン42万円


リッケンバッカー325C58MG ジョン・レノン バージョン42万円


中島「ビートルズが使っていたものに、限りなく近づける……
   それが、うちのお店です」


―― なるほど。……で、これがジョンの使っていたモデルってこと?
 どのへんが…………ジョンなの?

中島「(苦笑)。
   基本的に、現存しないモデルだったりします。
   ある時代の、彼らが使っていた楽器を復元する……というわけですが、
   写真を詳細に検証してつくるんです」


―― えっ? 写真?

中島「はい。あらゆるところから、当時の
   様々な写真を手に入れ、それを見て、
   限りなく、正確に復元するわけです」



練馬 WITH



―― えぇー!

中島「写真は、絶対に嘘をつきませんからね。
   ……例えば、こちら。
   元のモデルと比較していただくとわかりますが、
   アームの部分を替えています。
   これも、リッケンバッカーを買ったばかりの、
   ジョンの若い頃の写真を見ると、
   コフマンのアームがついてますが、
   それ以降の写真を見ますと、
   ビグズビーのアームに替えているわけですよ。
   それを正確に復元します。
   さらに、ノブも替えています。
   たとえば、今はなかったりする場合もあります。
   その場合は作ります。
   ブリッジが、今は手に入らないので、
   これは、うちで作りました。もちろん、写真を見ながら……。
   で、ネジの部分をご覧ください。
   プラスからマイナスに替えてます。
   さらに…………」



練馬 WITH



―― ちょ、ちょ、ちょい待ち。ちょい待ち。
   いやいやいや、正直、パッと見、ぜんぜんわかんなかったけど、
   すごいね、この手のかけよう……。

中島「(笑)。えぇ。もう、限りなく近づけるため、
   細かいとこまで見ます。ただ、難しい点があって……。
   なかなか、ギターの裏側が写ってる写真がないんですね、
   そこは苦労するトコです」


―― あは(笑)
   そりゃそうだ。


練馬 WITH



中島「このギターっていうのは、
   そもそも、とても不思議なギターでしてね。
   なぜ、こんなギターを
   リッケンバッカーが作ったのかも、不思議な話なんです」


―― ほぉ。

中島「ショートスケールなんですよ。ちょっと短いでしょ。
   考えれば、考えるほど、
   これはジョンのために、
   ビートルズのために作られたとしか思えないんです」


―― はぁ。

中島「ショートスケールって、スチューデントモデル……
   つまり初心者向けのギターだったんです。
   にもかかわらず、
   このデラックス使用。
   マイクが三つもついてて、アームもついてて、
   考えられないくらい、デラックスなんですよ
   普通は、こんなの作らない」


―― ふむふむ。……それは、50ccの原チャリに、
   メチャメチャ、プロ使用のパーツが乗っかっている……ってこと?

中島「(苦笑)。まぁ、その例えはよくわかりませんが……。
   だいたい、そういうことです。
   でも、そうだったからこそ、あのジョンの音が生まれたんです。
   ビートルズの楽器に関しては、実に不思議なことが多いですね。
   たとえば、ビートルズが、ストラトとレスポールだったら、
   あの音はなかったわけですよ。
   彼らのために作られた楽器……としか思えないものが、
   自然と彼らの元にあるわけなんです」




練馬 WITH


……彼らのために作られた楽器。
彼らの音を生み出した、奇跡の楽器。

俺は、俺の体の中から、ふつふつと沸き上がる衝動を、
抑えきれなかった。

俺には言わねばならない台詞があった。 なぜなら、そのためにここに来たのだから……。


  「オッケー、言いたいコトは済んだかい?だったら……いますぐ俺に、こいつを弾かせてくれ」


  リッケンバッカー325C58MG ジョン・レノン バージョン42万円


 【ジョンが奏でるスモーク・オン・ザ・ウォーター】
 
俺は弾く。この店で一番高いギターを弾く。
曲はもちろん決まっている……。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
ネジの一本まで正確に復元された、ジョンのギターで弾く。

おなじみの追記。
「平成のリッチー・ブラックモア」=「俺」。
俺のプレイのために、使用許可申請をJASRACに出してある。
JASRACお墨付きの、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だ。

……と、その前に。
俺はいつものように、右膝にボディを乗せて、
華麗なテクニックを披露しようと試みたんだ。

……ところが。
これが、なかなか難しい。
なぜなら、ネックが短いんだよ。
すると中島は言ったんだ。

「左膝に乗せたら、やりやすいですよ」……ってね。

というわけで、今回は、
“リッケンバッカー・オン・マイ・レフトニー”
……ってな部分に、注目あれ。


【平成のリッチー・ヴィン★セント×ジョンのギター】






―― あのさー。ところでさっきから気になっているんだけど、
   …………あの靴何?


練馬 WITH



中島「あっ。これも、写真から復元しました。
   知り合いの靴屋さんに頼んで……。
   コピーバンドの人がこんなのできないか……って。
   24〜5年くらい前から、作ってます」


―― す、すごいな。あんたの店の復元力。
   なんか、考古学とかの、学問レベルの話になってるよ。

中島「はじめは、ビートルズに固執するつもりはなかったんですよ。
   84年に本郷にお店を出しまして、
   60年代くらいの音楽が好きで、そういうかんじのお店を出しまして。
   そしたら、お客さんが、みんなビートルズ好きで。
   で、
   “こんなのできない?”とか、写真を持ってきて、
   “ここの部分は、こんなになってるよ”とか、
   ……お客さんに育てられたんですね」


―― うーん、いい話じゃないか。
   ビートルズファンの、情念にちょっと圧倒されるけど(笑)
   ところで、あんたはコピーバンドとかやらないの?

中島「よくぞ聞いていただきました(笑)
   Beaishという名の、バンドをやっています。
   今度、ライブをやるんで是非。実は、僕たちイカ天で、
   シー・ラブズ・ユーをやって完奏したことあるんですよ」


―― えぇ!? そ、そうなの?

中島「はい。ちなみに優勝したのは、
   ブランキー・ジェット・シティでした」



練馬 WITH



―― わぉ! なんか、聞けば聞くほど、いろんな話が飛び出てくるな。
   たっぷり聞きたい気もするが、
   最後に、あんたがガツンときた一曲を教えてくれ。

中島「もちろん、ビートルズでシー・ラブズ・ユーです。
   映画の最後で歌うんですよ。
   挨拶して、
   ドラムのイントロ2拍叩くだけで……。衝撃でした」


―― なるほど。いい曲だ。
   おっと、それともうひとつ聞かせてくれ。
   アンタのバンド、Beaishでは、アンタは誰なんだい?」

中島「ポールです」

―― オッケー。ポール。今日は出会えて楽しかったよ。
   必ず、アンタのライブ……行かせてもらうぜ。いや、まじで。


Beaishライブ情報

日時:4月20日(日曜日)
19:00-/20:00-/21:00-(3stage)

チャージ:2,000円

場所:マージー・クラブ浦和
http://www.merseyclub.com/

問合せ:048-832-0419
俺の旅はまだまだ続く。

 ヴィン★セント   俺が抱いたギターの、現在までの総額 80,848,000円也


■■■■■■■■■■■■

コノイチ 取材協力:
WITH
東京都練馬区桜台1-23-7
TEL: 03-3557-3372
URL: http://www.netlaputa.ne.jp/~with/index.htm


 






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